日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
この記事は食品の栄養素に関する一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。疾患の診断・治療・薬の調整などは必ず医師・管理栄養士にご相談ください。
妊娠中の食事は母体の健康だけでなく、胎児の発育・生涯の健康にまで影響することがわかっています。特に妊娠初期(〜12週)は胎児の神経管・心臓・骨格の形成が急速に進む時期で、この時期の栄養状態が特に重要です。「妊娠してから食事を変えよう」ではなく、妊娠を計画する段階から栄養を意識することが理想的です。この記事では、妊娠中に特に意識すべき栄養素とそれを含む食品を解説します。
葉酸はDNA合成・細胞分裂・神経管閉鎖に不可欠なビタミンB群の一種です。妊娠初期(特に受精後28日以内)に葉酸が不足すると、神経管閉鎖障害(二分脊椎・無脳症)のリスクが高まります。日本でも厚生労働省が妊娠を希望する女性・妊娠初期の女性に1日400μgの葉酸サプリメント服用を推奨しています。
食品からの葉酸摂取は葉酸サプリを補完するものとして重要です。緑葉野菜(ほうれん草・小松菜・ブロッコリー)・豆類・レバー(ただし妊婦のレバー摂取はビタミンA過剰リスクに注意)・柑橘類に多く含まれます。食事とサプリメントを合わせて1日600μg以上の摂取が妊娠中の推奨量です。
葉酸は熱に弱く、長時間の加熱調理で50〜70%が失われることがあります。蒸す・短時間炒める・サラダにするなど、加熱を最小限にした調理が葉酸を活かすポイントです。
妊娠中は胎児・胎盤の発育と母体の血液量増加(約50%増)により、鉄の必要量が急増します。食事摂取基準2020年版では妊婦中期・後期に1日16.0mg(非妊娠時の1.5倍以上)の摂取推奨量が設けられています。
妊娠中の鉄欠乏性貧血は早産・低出生体重児のリスクを高めます。産婦人科での妊婦健診では血液検査で貧血チェックが行われ、重度の場合は鉄剤が処方されます。食事での鉄補給は予防的に重要で、赤身肉・レバー(週1回50g程度まで)・貝類(あさり)・小松菜・納豆を積極的に食べることをおすすめします。
カルシウムは胎児の骨・歯の形成に必要で、摂取量が不足すると母体の骨からカルシウムが溶け出して補われます。妊婦のカルシウム推奨量は非妊娠時と変わりませんが(650mg/日)、実際には多くの妊婦で不足しています。牛乳・ヨーグルト・小松菜・木綿豆腐・ちりめんじゃこを毎日取り入れましょう。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、胎児の骨の発育に欠かせません。妊娠中のビタミンD不足は子どもの骨の発育不全・将来的な骨粗鬆症リスクと関連することが報告されています。鮭・サバ・サンマなどの魚類を週2〜3回食べることで補えます。
DHA(ドコサヘキサエン酸)は胎児の脳・神経系・網膜の発達に重要な脂肪酸です。魚(特に青魚)を週2〜3回食べることでDHAを補えます。ただし水銀含有量が高い大型魚(メカジキ・本マグロ・キンメダイなど)は妊婦は摂取量の制限が設けられているため、厚生労働省のガイドラインを参照してください。
生魚・生肉はリステリア菌・トキソプラズマの感染リスクがあります。妊娠中は特に免疫機能が変化しているため、刺身・生ハム・ナチュラルチーズ・スモークサーモンの摂取は控えるか十分に加熱して食べることが推奨されています。
レバーはビタミンA(レチノール)を非常に多く含み、妊娠初期に過剰摂取すると胎児奇形リスクと関連することが報告されています。鶏レバーは週50g程度まで、豚・牛レバーは特に注意が必要です。
アルコールは妊娠中は量の多少にかかわらず完全に避けることが推奨されています。少量でも胎児性アルコール症候群のリスクがあります。
妊娠中の食事は「食べ物を選ぶ」ことが多くなり負担に感じる方もいますが、基本は「バランスよく多様な食品を食べる」ことです。葉酸サプリメントの摂取と医師・管理栄養士によるサポートを活用しながら、無理なく続けられる食習慣を作ってください。
※ 栄養素データは文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補2023年」に基づきます。医療・栄養指導など専門的な用途には、必ず管理栄養士・医師にご確認ください。
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