日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
この記事は食品の栄養素に関する一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。記事中の内容は特定の症状・疾患の診断・治療・予防を保証するものではなく、効果には個人差があります。体の不調・疾患の診断・薬や栄養補助食品の使用については、必ず医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。
DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、魚油に多く含まれる長鎖オメガ3多価不飽和脂肪酸です。DHAは脳・神経系・網膜の構成成分として重要で、EPAは血液の性状・中性脂肪値への影響が研究されています。日本人は伝統的に魚食文化で心血管疾患リスクが低いとされてきましたが、近年は魚の摂取量が減少傾向にあります。DHA・EPAは体内でアルファリノレン酸(亜麻仁油・チアシードに多い)から合成されますが効率が低く、魚から直接摂るのが最も効果的です。
EPAは血中の中性脂肪を下げ、血小板凝集を抑制して血栓形成を防ぐ働きがあるとされており、動脈硬化リスクへの関与が研究されています。高濃度EPA製剤は医薬品としても開発・使用されていますが、食品からの摂取は薬と同等ではなく、あくまで健康維持を補助するものです。
DHAは脳の神経細胞膜に多く存在し、神経伝達のスムーズな働きに関わります。妊娠中・授乳中のDHA摂取は胎児・乳児の脳と網膜の発達に重要で、小児の認知機能・視力との関連が研究されています。高齢者では、DHA摂取量が多いほど認知機能低下リスクが低いという疫学研究もあります。
EPA・DHAには抗炎症作用もあります。アラキドン酸(動物性脂肪に多い)由来の炎症性メディエーターに対抗するプロスタグランジン・レゾルビンを産生し、慢性炎症を抑えます。関節リウマチ・アトピー性皮膚炎などの炎症性疾患への効果を示す研究も報告されています。
DHA・EPAは主に脂の乗った青魚に豊富に含まれています。魚の種類・部位・季節によって含有量が大きく異なります。
可食部100gあたりのDHA+EPA含有量が多い代表的な魚介類
世界保健機関(WHO)はEPA+DHAを1日250〜500mg以上摂ることを推奨しています。一般的な青魚1人前(80〜100g)を週2〜3回食べることでこの水準を達成できます。日本の食事摂取基準では目標量は設定されていませんが、週2〜3回の魚食が推奨されています。
現代の食事ではオメガ6脂肪酸(リノール酸:サラダ油・マヨネーズ・スナック菓子に多い)の摂取が過多になりがちで、オメガ3:オメガ6の比率は理想の1:4に対し実際は1:10〜20に偏っています。この不均衡が炎症の亢進と関連するとされており、魚の摂取増加と植物油の種類の見直し(サラダ油→オリーブ油・亜麻仁油)の両方が重要です。
魚が苦手な方は缶詰(さば・いわし・まぐろ)を活用すると手軽です。さば缶はDHA・EPAが100gあたり合計2,000mg以上を含み、コストパフォーマンスに優れた選択肢です。植物性のオメガ3(亜麻仁油・えごま油のアルファリノレン酸)は体内でのDHA・EPAへの変換効率が5〜15%と低いため、魚の代替にはなりにくい点に注意が必要です。
DHA・EPAを豊富に含む青魚を週2〜3回食べる習慣が心臓・脳・炎症への効果をもたらします。いわし・さば・さんま・ぶりなどの旬の魚や缶詰を活用し、サラダ油を減らしてオリーブ油・亜麻仁油を取り入れることでオメガ3とオメガ6のバランスを整えましょう。
※ 栄養素データは文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補2023年」に基づきます。医療・栄養指導など専門的な用途には、必ず管理栄養士・医師にご確認ください。
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