日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
この記事は食品の栄養素に関する一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。記事中の内容は特定の症状・疾患の診断・治療・予防を保証するものではなく、効果には個人差があります。体の不調・疾患の診断・薬や栄養補助食品の使用については、必ず医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。
日本人成人の約5人に1〜2人が睡眠に何らかの不満を抱えているとされ、寝つきの悪さや夜中の目覚めに悩む人は少なくありません。睡眠の質は室温や生活リズムだけでなく、夕食に何を食べるかにも左右されます。特にトリプトファン・GABA・マグネシウムは、睡眠ホルモンのメラトニンや脳をリラックスさせる神経伝達物質の材料になるとされる栄養素です。この記事では、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の実測データをもとに、どの食品にどれだけ含まれるか、1日の摂取量や一食分の目安まで具体的に解説します。
トリプトファンは体内で合成できない必須アミノ酸の一つで、脳内でまずセロトニンに変換され、日が暮れるとともに睡眠ホルモンのメラトニンへと変わっていくとされています。乳製品・大豆製品・卵・魚など、たんぱく質を含む食品に幅広く含まれており、この変換にはビタミンB6が補酵素として関わります。
マグネシウムは神経の興奮を抑えるGABA受容体の働きに関わり、脳と体をリラックスさせて眠りの深さを支えるミネラルとされています。不足すると寝つきの悪さや夜間に目が覚めやすくなるとの報告もあり、ナッツ類・大豆製品・海藻類に多く含まれます。
GABA(ギャバ)はアミノ酸から作られる神経伝達物質で、味噌・納豆などの発酵食品に比較的多く含まれることが知られています。GABAを含む食品やサプリメントが睡眠の質を改善したとする研究報告もありますが、エビデンスの規模はまだ大きくありません。同じくアミノ酸の一種であるグリシンも、えび・ほたてなど魚介類に含まれ、深部体温を下げて入眠を促す可能性が研究されています。
成分表のデータから、トリプトファン源となるたんぱく質・マグネシウム・ビタミンB6を豊富に含む食品を可食部100gあたりの数値でまとめました。一食分に換算した目安量もあわせて確認してください。
睡眠をサポートする栄養素(マグネシウム・トリプトファン源たんぱく質・ビタミンB6)を含む代表的な食品(可食部100gあたり)
就寝前のホットミルクは古くから安眠の飲み物として親しまれてきました。牛乳にはトリプトファンの供給源となるたんぱく質とカルシウムが含まれ、温かい飲み物で一時的に上がった深部体温がその後下がっていく過程が入眠のサインになるとも考えられています。コップ1杯(200ml)なら、エネルギー約122kcal・カルシウム約220mgの目安です。
「寝酒」として少量のお酒を飲むと寝つきがよくなったように感じる人もいますが、アルコールは睡眠の後半にレム睡眠を抑制し、睡眠全体の質を下げることが知られています。習慣的な就寝前の飲酒は、深い眠りが得られにくい状態を慢性化させるおそれがあります。
カフェインの体内半減期(体内濃度が半分になる時間)は個人差がありますが平均5〜7時間とされています。午後2〜3時以降はコーヒー・緑茶・エナジードリンクなどのカフェイン飲料を控えると、就寝時刻にはその影響がかなり弱まります。
朝食にヨーグルトと果物、昼食に納豆や豆腐を使った定食、夕食に魚や肉のたんぱく源を組み合わせるだけで、トリプトファンとマグネシウムを1日を通して無理なく摂取できます。就寝前に何か口にしたい場合は、ホットミルクやバナナ1本など、消化に負担がかからない軽いものにとどめるのがおすすめです。
就寝前2〜3時間以内の多量の食事は消化活動が睡眠の妨げになります。特に脂肪分・糖分の多い食事は消化に時間がかかるため、夕食は就寝の3時間前までに済ませ、どうしても遅くなる場合は消化の良い軽食にとどめましょう。
特定の食品だけで睡眠の質が劇的に改善するわけではありません。トリプトファン・マグネシウムを含む食品を意識しつつ、就寝・起床時刻を一定にする、就寝前のスマホ利用を控えるといった生活習慣とあわせて取り組むことが大切です。
睡眠の質を高める食事の基本は、夕食を早めに軽めに済ませ、トリプトファン・マグネシウムを含む食品を日々の食事に取り入れ、カフェインとアルコールの摂取タイミングに気を配ることです。毎日の小さな積み重ねが、眠りの質を底上げしてくれます。
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※ 栄養素データは文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補2023年」に基づきます。医療・栄養指導など専門的な用途には、必ず管理栄養士・医師にご確認ください。