日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
この記事は食品の栄養素に関する一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。記事中の内容は特定の症状・疾患の診断・治療・予防を保証するものではなく、効果には個人差があります。体の不調・疾患の診断・薬や栄養補助食品の使用については、必ず医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。
亜鉛は体内で200種類以上の酵素の構成要素となり、免疫細胞の産生・傷の治癒・DNA合成・たんぱく質合成・細胞分裂など生命の根幹的なプロセスに関わるミネラルです。また味覚・嗅覚の維持に不可欠で、亜鉛不足による味覚障害は現代人に増加している問題の一つです。日本人の食事摂取基準2020年版では成人男性11mg、女性8mgの推奨量が設定されています。
亜鉛不足の最も特徴的な症状が味覚障害です。亜鉛は舌の味蕾細胞の新陳代謝に必要で、不足すると「食べ物の味がしない」「何を食べても同じ味がする」「金属の味がする」などの異常が起こります。近年の食生活の変化(精製食品・加工食品の増加)に伴い、若い世代の亜鉛不足による味覚障害が増えています。
皮膚・粘膜の細胞分裂にも亜鉛は必須で、不足すると皮膚炎・口内炎・爪の白斑(爪に白い点)・脱毛が起こりやすくなります。また免疫細胞(特にT細胞)の産生が低下して感染症への抵抗力が低下します。
男性の生殖機能においても亜鉛は重要です。精子の産生・運動能力に関わるため、亜鉛不足は精子数の減少・運動率の低下と関連することがあります。牡蠣が「精力増強食品」として知られてきた背景には、亜鉛の豊富な含有量があります。
亜鉛は牡蠣・赤身肉・貝類に特に多く、豆類・種実類・全粒穀物にも含まれています。動物性食品の亜鉛は植物性食品より吸収率が高いのが特徴です。
植物性食品の亜鉛はフィチン酸(豆・穀物に多い)と結合して吸収が阻害されます。動物性たんぱく質と一緒に摂ることで吸収率が高まります。精製食品より全粒穀物・発酵食品(納豆・味噌)を選ぶことも亜鉛摂取に有利です。
ビタミンCは亜鉛の吸収を助けるとされており、野菜・果物と組み合わせることも効果的です。また過度なコーヒー・緑茶の摂取はタンニンが亜鉛の吸収を妨げる可能性があります。
亜鉛の過剰摂取(特にサプリメントから)は銅の吸収を妨げ、銅欠乏(貧血・白血球減少・神経障害)を引き起こします。耐容上限量は成人男性45mg、女性35mgです。通常の食事では過剰になりにくいですが、サプリメントを複数摂っている場合は亜鉛の総摂取量に注意してください。
亜鉛は牡蠣・赤身肉・貝類を週数回食べることで効率よく補えます。植物性食品中心の方は納豆・豆類・ごま・全粒穀物を毎日取り入れてください。味覚に異常を感じたり傷の治りが遅いと感じる場合は、亜鉛不足の可能性を考えて食事内容を見直してみてください。
※ 栄養素データは文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補2023年」に基づきます。医療・栄養指導など専門的な用途には、必ず管理栄養士・医師にご確認ください。
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